取材録・御用邸

御用邸とはそもそも、天皇陛下の別荘として扱われ、その後、記念公園として公共に見せることができるようになった場所である。できれば一度だけ訪れてみるのも良いだろう。
こちらに向かった私達の理由はもちろん某アニメのメインキャラクターの一人の家のモデルとなっていると言われていた御用邸で行ったインタビューだ。
そのインタビューに快く受けてくださったのは御用邸の副所長である吉澤氏である。たくさんのことを話してくれた有難いお方だ。

 

・ アニメについて思う事はありますか?

「御用邸の会議がありまして、沼津市がこういう形で売り出しているのを教えてもらっていました。それで初めてアニメの事を知りました」

その時吉澤氏はまだ深夜放送だとは知らなかったようである。彼はアニメなので、子供も見る早い時間だと思っていたので、番組表で探してみたところ見つけることができなかった。のちに受付の係員に聞いて、深夜番組だと知って驚いたそうだ。
また、一作目を知らなかったので、若い職員に『例のアニメ』っていう物語はどんなものなのっていうことを聞いたそうだ。

「松月さんや安田屋さんとアニメで繋がるとは思っていなかった」とも言っていた。アニメを通しての繋がりにも驚いていたようだった。

逆にこう質問された

「原作を作った方は沼津出身なのでしょうか?」

なぜそう思ったのか。それはこの沼津をモデルにした理由がわからないそうだ。もちろん、舞台にしてくれたのはありがたいが、私達もまたそう思ったことがあるので共感できた。それほど、忠実(多少美化されているが)に再現されているのだ。
また、年に1度開催される紅白歌番組にて前作の話をすると驚く様子を見せた。紅白を見ていたけれども、好きな歌手だけしかみていなかったそうだ。まぁ、アニメのことが好きでなければ、見ようとは思わないだろう。
彼は調べて、ラッピングバスの事も知ったようで、アニメの凄さに関心と驚きを隠せない様子だった。

 

・ 吉澤氏にとっての御用邸の見所

吉澤氏にとってのオススメは西附属邸だそうだ。当初、天皇の別邸であった本邸は終戦の1ヶ月前に大空襲によって、狙い撃ちされたように焼夷弾を落とされ、焼けてしまい今は残っていない。その代わりに西附属邸が別邸となり、東附属邸は昭和天皇や彼のご兄弟の学問所となった。

「本邸が残っていないのがとても残念です」と彼は語った。

「もしまだ、本邸が残っていれば、もっとこう皆さんに来場して見て頂きたい施設になっていたでしょう」

本邸は15万6千平方メートル、4万7千坪、東京ドームの3.3個分の広さがあったそうだ。それに本邸は部屋が95部屋あり、全て平屋だったのですごく広かったそうだ。明治時代には珍しい洋館もあった。本当に惜しい。

 

・ 近頃の変化は?

「ご家族連れの方がいらっしゃったんですよ。息子(男子中学生)さんが『ぜひとも自宅のモデルになっている東邸を見たい』と言っていました」

案内はしたけれども、建物の中に入ると、息子さんは家族に説明をしていたそうだ。ファンが家族連れで来る事と中学生が家族に説明していた事に対してとても驚いていた。
アニメとは関係ないが某スマホゲームの方で問題が発生している。

「夜間でもこの周りをうろうろしている若者が多くなっています」

警備員が夜間にパトロールしていると、中に入ってこようとする人がいた。「ここは朝九時から開くから、そうなったら入ってくれ」と注意。
皆さんもマナーには気を付けて(>―<)/

 

・ 現在の取り組み

「防空壕の中を整備して、お客様をご案内できればと思っています」

御用邸にも防空壕は存在しており、陛下用とお付きの人用がある。しかし、防空壕は国のものであり、まだ開いていない。
難しいのは、御用邸は偉い順に国、沼津市役所、管理政府と言う構成になっており、吉澤氏は市の職員ではなく、吉澤氏はその下の管理政府の社員の一人である。国の建物等は市役所担当だが、土地自体は国のものなのだ。市役所にも防空壕の鍵はまだ渡されていない。なので、飛び越えて、こちらがお願いというのは今のところ無理があるそうだ。
防空壕が開かれたらまた学ぶべき事が増えるのではないだろうか?それに未だにほとんどの者が見た事がない御用邸の防空壕の中だ。興味を惹かないわけがない。
私達が生きている間に、ぜひとも中が見られるようになって欲しいものだ。

 

・ 形態の維持

外国の100年、200年の建物は若干手直ししながら、昔の愛着をもって利用している。
どうやら、御用邸も少し似ているようだ。

「よくいうじゃないですか。『風通しが悪いと痛みがはやい』と」

日本の建築、とくに木造っていうのは中の人間の呼吸に呼応する。
窓を閉め切っていると、湿気が多くなり、痛みが出る。人間が見ていて、電球でも切れたらすぐ交換したり、障子も破れていたら張り替えたりするなどをして形態を保つ。海外と違うのは御用邸の場合は『修理』というところだろう。いずれにせよ、両者とも人の手によって今も形態を保っているのだ。
もちろん、手直しもしている。国の歴史上、学術上価値の高いものに付けられる名勝指定を受けている。なので、大げさに変えられず、今後どこを手直しするか考えているようだ。

 

・ こういうのがよろしくない

毎年のごとく、御用邸の近くにある海が海水浴場になる。そして、隣に学習院の保養所があり、その前が海水浴場。今年のシーズンは終わったが、8月の第一周目までは学習院の方もそこの保養所で、合宿みたいに一年生から三年生が交互に来て泳いでいる。
そういうのもあり、若者が夜、花火をする。

「花火をするのは良いのですが、マナーをもうちょっと守って欲しいです」

前は花火を御用邸の方に向けてやっていた若者がいた。それで芝生を焼いたことがある。それ以来巡回を強化している。10時までと看板に書いてあるのだが、それも無視してしまっているようだ。
そして、ご近所に自宅がある方々が流木を海岸清掃といってまとめている。それはなるべく火事にならないように配慮したものなのだろう。しかし、どこにでもいるもので夕方あたり何者かが故意に、流木に火をつけた。

「だから毎日、警備員が点検しているのですけども」

警備員がフェンス越しで、花火をフェンスの方に向けないように注意をしているが、当の警備員は「少し怖い」と思っていることを吉澤氏は苦笑しながら話してくれた。御用邸の方で火事になったり、故意に火をつけたりされる危険性もある。それ以外に、注意したことにより、相手が逆上し、ナイフで刺されてしまう可能性もある物騒な世の中なのであまり強く言えないようだ。
夜中に騒がれることも、その様な物騒なこともあるのは本当にゾッとする。できれば、周りの迷惑を考えて欲しいし、自分の憂さ晴らしのためだけに人や歴史ある建物を危険にさらさないで欲しいものだ。

 

結果
御用邸はアニメの経済効果などに対して驚きを隠せないようだった。アニメ関連のマナーの問題はない。しかし、毎年のごとく迷惑をかける人間はいるようだ。

 

取材後、
我々は吉澤さんのご厚意により、東附属邸の中と周りを見せて頂いた。